【序章】 硝煙の匂いが充満していた。 空薬莢がそこら中に落ちていて歩き難い。 それと、床に大量の砂が小さな山を幾つも作っていた。 何故か、その砂は紫色。 砂だというのに、噎せ返る異臭を放ち、粘り気が少しあった。 「ハァ…、ハァ……、これで……全………部か…………?」 過呼吸になりながらも、彼は動くことを止めない。 肺の中に硝煙と異臭が入り込んでも、彼は呼吸を止めることができない。 それはある意味では地獄だった。 「やはり、君は凄いね。あの大群をほんの五分程度でしとめてしまうんだから。」 ガスマスクを装着した白衣の男性がどこからか現れて、彼に感嘆の言葉を贈った。 「ふざけ……んな。」 とても苦しそうに顔を歪めながらも彼は白衣の男性に悪態をついた。 「あはは、そんな状態なのに、まだそんな威勢があるのかい。」 白衣ガスマスクの男性は楽しそうな口調で話し掛けると同時に、彼に近寄っていく。 「くそ……、死にやがれ………マッド野郎が…………。」 彼はそういうと意識を失うのだった……。 【一章】 蝉の鳴き声が微かに聞こえていた。なんだか元気が無いように思える。きっと、自分が元気じゃないせいだろう。人間とは何事も主観で捉えがちだ。人によってはこの蝉の鳴き声が煩く聞こえるのだと思う。でも今の自分はそう思わない。 「……生きてるのか。」 口に出して呟く。その言葉は虚空に消えた。 まぶたを上げる。眩しくてしかめっ面になった。十秒ぐらいしてやっと目が慣れた。そして自分がどこに寝かされていたかを知る。病院の個室。窓の方に顔を向けてきっと五階あたりだろうと推測した。きっとここはお得意様の病院だろう。なにせ見覚えのあるものばかりだ。あの花瓶や、このナースコール、それに荷物入れ。全て何度も見たことのある物。 「失礼しま〜す。」 若い女性の声。きっといつもの女性が入ってくることだろう。見るからに中学生ですと言わんばかりの容姿をしたあのドジッ子が。 「目、覚めました〜?」 ガラガラと扉を開けて中に入ってくる看護士。思った通りの女性だった。 「またアンタか。偶には他の看護士が来るとかはないのか?」 そう言うと彼女は口を尖らせた。 「私じゃ不服なんですか? 毎回毎回、一生懸命看病してるのに。」 「だってなぁ、毎回毎回ミス起こされたら誰だって願い下げだろう。真正のドジッ子め。」 あからさまに不服な声音だった。しかし、その中にも感謝と冗句の声音が混じっている。 「ドジッ子なんて酷いです。私はどこかのゲームの攻略可能なキャラクタですか。」 「誰もお前なんか攻略しようなんて思わねぇよ。」 そう言うと彼はクスクス笑った。 「う〜、ひどいです〜。」 なんて返しながらも、彼女は一緒に笑った。 「元気そうだな、Mr.Black Angel。」 黒のスーツに黒のシャツ、そして黒のネクタイをした男性が何時の間にかそこにいた。 「Boss!?」 看護士が驚きで声を裏返らせた。 「そう驚くことではない。Miss.White Wall、私とて部下の見舞いには来る。」 「……Mr.Grim Reaper、本当は見舞いに来たんじゃねぇだろ。」 Miss.WWは彼の不尊な態度で顔面蒼白になった。 「Mr.BA!? Bossに向かってなんて口調を―――。」 彼女はヒステリックに叫んだが、彼は気にしていない様子だった。 「気にすることはない。私とて皆とはタメ語で話したいと思っているのだから。君も気にせずにタメ語で話してくれて構わんよ。」 Mr.GRはそう告げると二人に笑みを見せた。 「で、Mr.GR。何をしに来たんだ?」 「実はだな…、君達【Blood Rain】には合宿をしてもらうことにした。期間は明後日から一週間だ。勿論、Mr.BAにも参加してもらう。そして、万が一の為にMiss.WWにも同行してもらうので準備をしておいてくれ。」 「「Yes Boss.」」 二人は間髪入れずに返答した。 「では、合宿先で会おう。」 告げると男性は病室を後にする。二人はそれを見送った。 【Blood rain】 それは政府公認の民間組織で異者撲滅用特殊強襲部隊の事だ。彼らの行く先々で異者達の、正に血の雨が降ることから【Blood rain】という呼び名がついた。 異者というのは、一言で言ってしまえば変な生命体の総称だ。その種類は多種多様。放射能による生態変化種や古来から妖怪として認知されている者、はたまた地球外生命体など、全て異者に入る。それらは人類、または生命体に害をなし、大地を腐らせる。よってそれらは撲滅しなければならない。彼らはそれらを異なる者【異者】と呼ぶ。そうそう、彼らは自分達を決して本名で呼び合わない。常にコードネームを使い、連絡を取る。どうやら異形の中には本名を知ることにより、呪いを発動させることのできる者がいるという。コードネームで呼び合うのはその系統の異形に対する対策なのだとか。 【二章】 【Blood rain】の面々はとある樹海に集結していた。幽霊とかが出てきそうな不気味な樹海である。一般の人間はまずここに近付くことはないだろう。まぁ、だから彼らはここを合宿地に選んだのだろう。 「……随分と不快な場所ですね〜。」 Miss.WWは苦笑い。どうやらこういう所が苦手らしい。怖がっている所を見ると本当に中学生ではないのかと疑問に思ってしまう。容姿だって三つ編みお下げに黒縁丸眼鏡。背も低いし、起伏のない体つき。どう見ても中学生にしか見えない。服装はナース服。樹海だというのに一体何を考えてこの服を選んだのだか…。 そんなことを思うMr.BAの服装は濃紺のスーツに赤紫のシャツ、第一ボタンを開けていて、ネクタイはしていない。首もとに鍵の首飾りが見え隠れしていた。どう考えても樹海巡りをする恰好ではない。更に付け足せば、彼は寝起きの様なボサボサな髪型をしていて、明らかに人の視線など気にしない質だとわかる。それに彼だって見た目は高校生ぐらいの若さだ。どんなに偽っても二十前半がやっとだったりする。 ここにいる【Blood rain】の面子五人は皆、似たり寄ったりの恰好だった。 これでは只の怪しい軍団だ。 「不快な方がいい。俺らの仕事で快適な時なんて無いからな。」 「そうですねぇ。【Blood rain】の仕事は何かしら不快ですもんねぇ。」 そう言うと彼女は苦笑いした。 その時、ヘリの旋回音がけたたましく轟いた。そしてヘリの入り口が開いて、人が落ちてきた。ヘリと地面の距離約50m。普通に考えたら即死のはずだと思うのだが、彼は難なく、静かに、そして優雅に着地した。 「みんな! おはよう!!」 爽やかな笑顔で皆に挨拶を交わす三十代の男性。 彼が【Blood rain】の副隊長Mr.Arrive Godだ。特徴は黒くて艶やかな長髪。2m近くある身長。四十前後しかない体重。少し締まりのない顔。 「Mr.AG、おはようございます。」 彼女は深々とお辞儀した。 「しろちゃん、おはよう。今日も可愛らしいね。また、くろくんのお守りで来たのかい?」 優しくて涼しい笑顔。その笑みを見た彼女は少し顔を赤くさせながら頷いた。 Mr.AGは三十半ばだというのにモテる。その爽やかで優しい笑みには人を引きつける魅力を有していた。そのおかげでいつでも彼の側には二、三人の人が付き纏っている。 「おい、たらし男。Mr.GRはどうした? 奴も来る予定だろ?」 「くろくん、もう少し高位の人間に敬意を表さない?」 苦笑いしながら、彼は頬を掻いた。 「けッ、誰が敬意なんて表してやるか。お前みたいな女たらしは罵倒語Onlyで充分だ。」 そう言い放つと、彼は取り敢えずMr.AGから距離を置いた。ついでにMiss.WWも一緒に連れて行く。奴の近くに女を置いておくとどうなるか判らないから。 「やぁ、黒き天使に白き壁。今日も相変わらず仲がよさそうだねぇ。」 無意味に歩いていると男がニタニタ笑いをしながら近づいてきた。 この男性はMr.Mad Devilという。常時白衣着用、その下にはヨレヨレのワイシャツとスラックスを身に着けている。先日、Mr.BAを病院送りの原因を作ったのがこの男だ。 「マッド野郎、ゼッテェ殺してやるからな!」 吐き捨てると、すぐさま別の場所に移動する。 「あ、メガネちゃん、おはよう。バカ天使もいるのね。」 妙齢の女性が近寄ってくる。隣には、黒いゴスロリ服を着た七歳ぐらいの少女が彼女と手を握って、トコトコ彼女を追いかける様に小走りしていた。 「Miss.Great FateにMiss.Cool Doll、おはようございます。」 彼女は満面の笑みで二人に返した。ついでに言っておくと【Blood rain】の女性陣は仲がとてもいい。プライベートでもよくつるんでいるとのことだ。 「誰がバカだ、エセウェスタン女め。」 Mr.BAは毒突いた。鋭い眼孔で睨み付ける。 「いいじゃない。気に入ってるんだから。」 口を尖らす彼女。なんだか、それがそても不釣り合いな仕草に思えた。 Miss.GFは西部劇に出てくるガンマンの様な服装だった。キッチリウェスタンハットまで被るという凝りようだ。そんな彼女はモデルの様な体型をしているものだから、兎に角、格好いいお姉さんに見えるのだ。きっと彼女なら馬に跨って疾走していようが不自然ではないだろう。実際、彼女は仕事中は大抵、馬らしきものに乗っている。 「それに、バカにバカって言って何か悪い?」 睨み合う二人。嫌な空気がその一帯だけ充満していた。 「……喧嘩はダメ。」 そんな時、冷たい声音が二人の間に入った。 無表情、無感情を保ち続けているMiss.CDであった。彼女はそれだけ言うと、常時抱えているフランス人形の髪を弄り始める。なんだか、それを見ていると喧嘩しているのがばかばかしくなってしまった。 「…この子にはかなわないわね。」 Miss.GFは溜息を吐くと、首をブンブン振って脳内を整理した。 「全く、相変わらず戦意喪失させるの上手いな。」 頭をガリガリ掻きながら彼は降参とでも言うかの様に掌をひらひら回せるのだった。 刹那。 凄まじい爆発音が樹海全土に轟いた。 「な、何だ!?」 「見に行きましょう!!」 Miss.WWは言い終わるより速く駆けだしていた。 「ま、まてドジッ子!!」 ドテッ。 追いかけようとした矢先、彼女は盛大にコケたが、立ち上がって、今にも泣きそうな顔をしながらも、走り出した。見ていて危なっかしすぎる。 Mr.BAは顔に不安を浮かべながら彼女の後を追う。 それを見ていたMiss.GFはニヤニヤと笑みを洩らしながら、とある人の所に向かった。 「オイ! 待てっつってんだろ!!」 数十回目になる怒号でやっとMiss.WWは立ち止まった。既に彼女は泥だらけだった。 「何です!」 「武器は持ってるのか!?」 「あ……。」 そう言われ、初めて自分が武器を持ってきていないことを知った。 「ど、どうしましょう…。」 オロオロし始める彼女。今の彼女は只の小娘にしか見えなかった。 「はぁ……、もう少し考えて行動しろよ。」 「その通りだよ! だけど今回に限っては気にすることじゃない。何たってこの僕がわざわざ持ってきてあげたからね!!」 突然、キラキラとしたものを舞わせながらMr.AGがオフロードバイクに乗って登場した。 どこまでも派手好きらしい。 彼は多くの新聞でくるまれた円筒形のものをMiss.WWに投げ渡し、そのまま去っていく。 「待てや! お前仮にも副隊長だろ!! 帰ってどうする!?」 Mr.BAが叫んだ時には、既に彼は姿を消していた。 「あのクソ野郎…。部下置いて逃げやがって……。」 低い声で呻くと、彼らは一刻も早く爆心地に行こうと駆けるのだった。 「グギャァオオォォォォッ!!」 大地を揺るがす咆吼。 「…どう思う?」 爆心地に着いたMr.BAは頭を抱えながらMiss.WWに訊ねた。 「きっと、いえ、絶対にアレのせいでしょうねぇ……。」 そう言って彼女が指さしたのは、巨大な岩だった。周りが半球形に抉れていることから、それが隕石だと判る。 「…面倒だな。ウジャウジャ出てきやがる。」 「どうしますぅ? 殲滅しちゃいますかぁ?」 既に彼女は抱えていた円筒形のものの新聞を外しにかかっていた。 「言語が理解できる奴がいれば良いんだが…。」 「大声で語りかけてみるのはどうですかぁ?」 小首を傾げて提案してみる彼女の仕草はやはり幼稚に見えた。 「そうだな…。」 すぅっと空気を一杯吸い込んで、声を張り上げた。 「我々は【Blood rain】である! 話が通じる者が居るならばかけあいたく思う!!」 「グギャェェェ」や「ガルルゥゥゥ」などの奇声しか返ってこない。それどころか、わんさかいる異者が襲いかかってきた。 「危険です! 撃ちますよ!!」 彼女の前には、重機関銃ゼネラルエレクトリックM134“ミニガン”GAU-2B/Aタイプが置かれていた。この銃は銃口が五つぐらいあって、それがぐるぐる回りながら弾丸を吐き出すのが特徴だ。弾丸はベルト式なのでまず、弾切れになることはない。 いつ見ても、ナース服に重機関銃という組み合わせは異質だと思ってしまう。もう何十回と見ているはずなのに。 「まだ撃つなよ!」 「ですが!」 Mr.BAはもう一度、目一杯空気を吸い込んで。 「異者達よ! 我々の言語が判るなら話し合おう!!」 全ての異者が止まる。その光景を見ていると時間が止まった様にすら思えた。 「…人よ。多くの神を敬い、神に微笑まれた者の末裔よ。私共はこの星を貰い受けに来た。この星の長との会見、懇談を望む。私を連れて行くか、長を連れて来るかして頂きたい。」 声、というよりかはテレパシーに近かった。脳に直接文が送り込まれてくる。 「異者の長は貴方か?」 取り敢えず接待口調。 話し合いで必要なのは適度な敬意と攻撃の姿勢、と誰かに言われたのを思い出したから。 「そうだ。」 「我々はその望みを受け入れることはできない。我々人類は起源より自分と異なる者に恐怖を抱き、迫害し、駆逐してきた。それは今後も変わらないだろう。なぜならそれは人類の存続に関わることだからだ。よって我々は貴方達と共存ができない。すまないが他の星を当たって頂きたい。」 異者の長はそれを聞くと、声を大にして笑った。なんだか少しウザく思う。 「誰が共存を望んだか! 人類には二択!! 駆逐! もしくは奴隷化よ!!」 「そちらの要求は理解した。我々はその要求を受け入れない。よって殲滅する! 嫌ならば逃げ帰るがいい!!」 「ハハハハハッ。私の民よ。あの者らを殺せ!!」 その号令をきっかけに異者共が一斉に襲いかかってきた。 「撃て!」 「はい!!」 引き金を思いっ切り引いた。しかし、弾はでない。 「あ、あれ?」 「何してる! 殺されたいのか!?」 「あ、セーフティ掛かったままでした。」 「ふざけんなドジッ子!!」 「酷いですぅ…。」 彼女は口を尖らせながらセーフティを解除した。そして引き金を引く。 やっと“ミニガン”が火を噴いた。絶え間なく弾丸が吐き出され、異者共が穴ぼこだらけになっていく。ズダダダッ―――っと長い、長い発射音が轟き続ける。 ミニガンを握っている彼女はどこまでも無慈悲だった。 「Miss.WW、もういい!」 「えっ!? あ、はい。」 怒鳴ると彼女はあたふたしながら発砲を止めた。球の着弾によってできた砂埃の幕が晴れていく。そして、視界が開けると、ほぼ同時、彼女の手前5mより奥に紫色の砂山が無数にできているのが確認できた。 「Mr.BA? あの隕石壊さないんですかぁ?」 「壊す、だがその前に調査だ。だからミニガンはしまっとけ。」 彼女は言われるがまま、ミニガンに肩掛け用のベルトを着けて肩にかけた。新聞の塊も一緒に持つ。どうやらまだ何かくるまっているらしい。 二人は隕石に近づいた。大きさは大体十階建てのビルほどで、球形。 「行くか。」 「えっ!? …入るのはみんなが来てからにしません?」 顔が青白くなっていた。怖いらしい。まぁ、未知の生命体の本拠地に入るというのだから怖いのも仕方が無いだろう。【Blood rain】でも人間であることに変わりはないのだから。 「いや、入るぞ。待ってる内に風向きが変わったら危険だ。」 それだけ告げると彼はそそくさと中に入ってしまった。 「ま、待って下さいよぅ。」 彼女は泣きべそをかきながら、彼に続いた。 【三章】 「凄いな。この宇宙文明はこんなにも進んでいるのか。」 Mr.BAは素直に感嘆した。 隕石の中は超高度な艦だった。 未知の鉱物を使った壁、動く床、照明器具がないのに明るい艦内。 「凄いですねぇ…、異者の文明なのに。」 「それ偏見。異者だって今回みたいな宇宙生命体だと高度な文明ぐらい持ってるもんだぞ。」 そんな会話をしながら歩いていると、広場らしき場所にでた。どうやら集会所の様だ。勿論、集会所なのだから異者も沢山いる。 「*qr??」 とある一体が理解できない言語を喋ると、そこにいた者達全てが二人に襲いかかった。 「Mr.BA!!」 一瞬でミニガンを設置したMiss.WW。しかし、Mr.BAが銃口の前に手を出して制した。 「何故です?」 異者の爪が彼を襲ったが、それをひらりとかわし、同時に懐から拳銃を取り出して三連射撃をした。その異者は悲鳴を上げることなく、砂と化した。 「Miss.WW、援護を頼む。」 五発。三体が砂となった。 「ミニガンと一緒にウージーも持ってきてるんだろ?」 「了解です!!」 ほぼ同時にウージーが呻った。Mr.BAはそれを見て微笑んで、舞いだした。 ウージーの射撃音というBGMにノリながら彼は踊る様にデザートイーグル50AEを歌わせる。そして、懐からもう一丁50AEを取り出して、二丁でリズムを作り出す。それによって異者は激臭を放つ紫色の砂と化していく。 砂山の崩れる音と、50AEの銃声と、ウージーの射撃音が紡ぎ出す破滅の交響曲。 その中で踊る様に闘うMr.BAの姿は、黒き天使の名にふさわしい。 「楽しそう…。私も踊りたいですぅ……。」 ウージーで弾丸をばら撒きながらそんなことを呟く。 「…じゃ、踊らせてあげる。」 ビックリして、後ろを振り向く。引き金は勿論、そのままで。 「Miss.CD!? …ということは―――」 「みんないるよー。」 Miss.GFが返した。彼女はダガーを投擲しながら前線に加わる。 「バカ天使! 異者の胸当たりにある黒い石狙いな!!」 Mr.BAはニヤッと笑んだ。 「しろちゃん、行っておいで。援護は引き受けるから。」 「ありがとうございますぅ。」 彼女はミニガンとウージーを一緒に肩にかけると、スカートのポケットからベレッタPx4stormを取り出して、参戦した。 「じゃ、僕も出るとしよう。」 腰の鞘から小太刀を二振り抜刀して逆手に持った。 「…小太刀二刀……、殺陣煉獄!!」 Mr.AGはどこまでも優しく、酷い。 わざわざ攻撃の前には技名を伝え、視線で誰を狙っているのか教えてしまう。そして、常に一撃必殺しかやらない。逃げれば大怪我。 慈悲深いのも、彼に関して言えば、考えものだった。 「エリザベス。」 Miss.CDは抱えていた人形を地面に下ろしてやった。 「マスタ、いいの?」 フランス人形が喋った。Miss.CDは一度だけ頷いた。それで充分。 エリザベスは残酷な笑みを見せるとどこからか巨大な槌をとりだして、振り回した。遠心力を使って、そのまま槌を異者ごと床に叩き付ける。 ドゴッ、グシャッ、ザーっという嫌な音が連続して、異者は斃れた。 「みんな、何でもやり放題ね……。」 苦笑するMiss.GF。 「アタイも遊ぼうかしら。」 ニヤニヤ笑いながら、口笛を吹く。するとどこからともなく馬らしきものが姿を現した。 それはユニコーンだった。 「遊んどいで。」 ユニコーンの背から弓と筒を手に取ると、彼女は告げる。ユニコーンは嬉しそうに異者を蹴散らしながら駆けていった。 「炎は共に、異なる者には死を。」 弓矢を放つ。矢に火が点り、異者を焼いていく。 集会所は砂漠の様になっていた。砂の色は紫と異質だが。 「楽しかったですぅ♪」 Miss.WWは満面の笑みだった。 「俺は一刻も早く、この激臭立ちこめる集会所から出て行きたいけどな。」 「…目的、忘れてる。」 Miss.CDの呟きで二人は当初の目的を思い出した。 「そうだった。長を討ち取らねぇと。」 50AEのグリップを握り直し、歩き出す。 「くろくん。行くならしろちゃんも連れて行きなさい。僕達はそこら中、歩き回って異者の殲滅に当たるから、君達は長の所へ。この建物の地図は、外で色々と調査している博士くんから今さっき届いたから、持ってって。」 「あのマッド野郎、外に居るのか。」 憎悪たっぷりに吐き捨てた。 「と、兎に角、行きましょうよぅ。長居したくないですしぃ。」 「そうだな。」 Mr.BAは地図を受け取ると、Miss.WWを連れて足早に目的地へと向かった。 「さて、可憐なお嬢様方は僕と来て貰うよ。」 「「Yes,sir.」」 【四章】 「フィーバーターイム!」 掛け声一つでエリザベスは奇妙な術を発動した。 花火と三トン槌と巨大金貨が無数に落ちてきて異者を襲った。 一気に異者が砂となり、通路が開く。 「走れ走れ走れー!!」 Mr.AGが叫ぶ。 「阻む者は全て薙ぎ倒す! 魔人千裂衝!!」 「何で、さっきからテイルズシリーズなのよ! ナムコにちゃんと許可取ってるのー!?」 Miss.GFが悲鳴を上げる。 「許可? そんなもの取っているわけがないだろう。ナムコもファンの心意気だと思って許してくれるはず!」 言いながら一薙ぎ。ザーッと言う音が背後から聞こえた。 「目障りだ! 魔人闇!!」 神速の突きが通路を封鎖していた異者共を一瞬にして砂化した。 「あぁ、もう! どうにでもなっちゃえ!!」 彼女はやけをおこして叫ぶ。 「月閃光!!」 二本の小太刀が月を描く様に異者を捌いた。 「ハハハハハッ、私はトクナガより強いのよー!!」 エリザベスは高笑いしながらドタドタ走る。 「判る人にしか判らない固有名詞だしちゃダメー!」 「ハハハ、気にしちゃいけない。飛燕連脚!!」 「荒れ狂う殺戮の宴! 殺劇舞荒拳!! トドメー!!!」 エリザベスが超高速連打を繰り出す。 「続けていくよー! 十六夜天舞!!」 満月がエリザベスを祝福している。 そして、この一撃によって異者はほぼ全滅へと追い遣られた。 【Blood rain】の面々はこんなドンチャン騒ぎをしながら異者の殲滅を続けるのだった。 【五章】 「キチガイめ! ぬけぬけと私の眼前に現れおって!!」 薄暗い大広間だった。立方体のその広間は、扉と反対側の壁にくっつく様に玉座が置かれていた。そしてその上には鵺が座っていた。 「さて、死ね。」 冷酷に告げて、彼は銃口を向けた。 「ハハハハハ。誰が死んでやるものか!!」 そう言って鵺は高笑いを始めた。その瞬間。 ズダダダダダダダダッ――――― ミニガンが無慈悲に火を噴いた。 「ま、待て! オイ!!」 Miss.WWは聞いていない。 「滅滅滅滅―――」 彼女は何かを呟きながら引き金を引き続ける。 「待てっ! 俺が死ぬ!!」 彼女は気付かない。既に鵺は息絶え、砂と化している。 「ドジッ子! いいかげんにしやがれ!!」 彼女の持つミニガンをどうにかして蹴り飛ばし、裏拳を入れた。 「あうっ。……うぅ。痛いですぅ……。」 「ったく、気付いたか。ほれ、出るぞ。」 彼は彼女の手を?み、スタスタ歩き出した。と、その時。 爆発音。 「あ!? 今度は何だ?」 そんな疑問を口に出した時、エリザベスが部屋の壁をぶち破り入ってきた。 「しろちゃん、くろくん、脱出だ! もうすぐここは跡形も無く爆発するぞ!!」 ギョッとした。いきなりそんなことを言われたら誰でも驚く。 「ふざけんな!!」 言うが速いか、彼は彼女を連れて走り出していた。残りの三人と二体も後に続く。 ドタドタと足音が通路に響く。何故か通路はボロボロになっていた。 「間に合えー!!」 走って、走って、出口が見えた。 「ウオオォォォォッ!!」 駆け抜けた。一気にくぼみの上まで走りきった所で。 ドゴォォゥゥッと盛大な爆発が起きた。砂埃で視界が消える。 少しして、視界が晴れ、全員の無事が確認された。 「クソ、マッド野郎も生きてるのか。」 全員無事の確認をした時のMr.BAの一言目はこれだった。おかげでみんなが笑った。 そんな時だった、【Blood rain】の隊長であるMr.GRが到着したのは。 「遅れて、すまない。では、強化訓練を始めよう。」 一同が凍り付いた。 「……マジ?」 一番最初に呟いたのはMr.BA。 「あの…、Boss、流石に止めませんかぁ?」 顔面蒼白に成りながら提案したのはMiss.WW。 「ふむ、……やろう。折角来たのだし、予定まで組んだのだからやらなくては損だ。」 皆の顔が死刑宣告を受けた患者の様に成り、悲鳴を上げた。 こうして、よく判らない今回の異者殲滅は終わりを告げた。 ついでに、言うまでもないが、彼らは勿論、あの後一週間のサバイバル強化合宿を行った。その間、罵倒と怒号が何度も轟いたのは、言う必要すらもないか……。 Fin
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